スタッフが同じ方向を向く喜び
この仕事で、一番充実するのはどんなときですか
スタッフが同じ方向を向いたときです。
もちろん、お客様が初めてナイスショットを打たれたときも嬉しいです。でもそれ以上に、この方に入会していただけるようみんなで頑張ろうとか、施設が壊れてしまったからみんなで直そうとか、そういう瞬間ですね。ベクトルは、放っておくとずれます。それが揃ったときが、一番充実しています。
よくスタッフやお客様から、誰よりも楽しそうにしているよね、と言われます。美味しいものは美味しいし、楽しいことは楽しい。嫌なことは嫌だと言いますけど。
ストレスの発散は、ゴルフと、あとは街を歩くことです。銀座に出てウィンドウショッピングをしたりします。本当に悩んでいるときは、一人で過ごすようにしています。人に愚痴を言うのがあまり得意ではなくて、一人でいる方がヒントが見つかるんです。お酒もそんなに強くないので、飲んで発散することもありません。ただ頑固なだけかもしれませんね。
ゴルフを教わる環境がなかったそうですね
父がゴルフをやっていて、小学生の頃に見よう見まねでパターを握ったのが最初です。本格的に始めたのは高校生になってからでした。ちょうどその頃、家の近くに練習場ができたんです。いまのカスタネットの前身にあたる練習場でした。
その練習場で打席係とボール拾いのアルバイトを始めて、代わりに練習もさせてもらいました。当時はジュニアスクールというものがなく、習ったことは一度もありません。練習場のコーチに聞いたり、上手な方のそばで見せてもらったりしながら、独学でやってきました。
大学のゴルフ部という話もあったんですが、うちはあまり裕福な家庭ではなかったので、進学はしませんでした。18歳で、ゴルフショップとゴルフスクールを運営している会社に入りました。用具の販売をしたり、レッスンのサポートをしたりする仕事です。その会社が、当時カスタネットの中で営業していました。
正直に言うと、ほかのことは何も考えていませんでした。ゴルフ小僧がそのまま大人になった、という感じです。
20年の仕事で学んだこと
32歳で、福岡から東京へ移られました
当時の社長から声をかけていただいたんです。竹の塚のヘッドプロが代わるタイミングで、東京で仕事をしてみないか、と。20年前のことでした。
そのとき20年もいることになるとは、まったく思っていませんでした。かといって、すぐ帰るつもりでもなかった。後先はあまり考えないんです。目の前のやるべきことをやっていたら、20年経っていました。
家族は福岡に残っているので、この20年はずっと単身赴任でした。それも、この10月でひと区切りになります。
東京に来て驚いたのは、こちらの方が指導にお金を使うことにためらいがない、ということでした。提案したものが高いか安いかを判断して、ではお願いします、と決まっていく。仕事はすごくやりやすかったです。ただ、ゴルフが上手くなりたいというお客様の気持ちは、東京でも福岡でも同じです。だから、どこの土地で働くことになっても、そこは不安に思っていません。
忘れられない失敗はありますか
10年ほど前でしょうか。千葉のパルコの中で、女性専用のゴルフスクールを立ち上げる責任者を任されました。ところが最初からうまくいかず、そこへ入っていたビルがなくなるという話も重なって、スクールが閉鎖になったんです。かなり落ち込んで、竹の塚に戻ってきました。
ただ、そこで会社を辞めるという選択肢は自分の中になかったですし、辞めさせられることもありませんでした。会社が守ってくれたんです。竹の塚のスタッフも温かく迎えてくれました。だから、いま何を言われても、会社のためにも自分のためにも頑張れる。あれがなかったら、たぶんそう思えていません。
仕事のやり方も、あそこで変わりました。女性専用のスクールでしたから女性スタッフも多くて、もっと繊細に、丁寧にやらなければいけないと思うようになりました。それから、尖ったことを始めるときは、必ず少しは失敗することも織り込んでおくようになりました。打席の作りでもシステムでも、あとから変えやすい形にしておく。型さえ作っておけば、間違っていたと分かったときに直せます。自分を追い詰めずに済むんです。

マネージャーとして、意識していることはありますか
落ち着いて話せるようになったのは、ここ5年ほどのことだと思います。支配人とマネージャーを兼ねるようになって、学生のアルバイトから、自分より年上のテニスコーチまで、いろいろなスタッフと分け隔てなく接するようになりました。いいことも悪いことも経験させてもらったので、それで落ち着いてきたのかなと思います。
話を聞くときは一対一。ものを伝えるときは、できるだけ大人数。最低でも3人以上に、まとめて話すようにしています。
一対一だと本音を話していただけるからです。逆に、伝えるときに一人にだけ話すと、そこで止まってしまう。3人に話しておけば、誰か一人が次の人に繋いでくれます。スタッフのベクトルを合わせるのに、これが一番効きました。
もうひとつ、まず自分の意思を先に出すようにしています。「どうしようか」ではなくて、「僕はこう思うんだけど、あなたはどう思いますか」と聞く。ChatGPTにも全部は聞かないようにしているんです。自分で作ったものを出して、直してもらう。その方が、相手にも考えてもらえます。
困ったときは、あまり人に相談しません。まずは自分で考えます。もちろん答えが出ないことの方が多いので、そういうときはほかの事業所を見に行ったり、責任者会議や取締役との対話の場で解決策を探したりします。ただ、そこにも必ず自分の案を持って行きます。違うと言われたら変えればいいし、それでいいと言われたら進める。取締役から「それが得意だね」と言われたことがあります。
その代わり、これはどうしてもというときは動きます。コロナ禍でテニススクールを休業しなければならなくなったとき、どうにかならないものかと社長に直接相談しに行ったことがありました。それで運営を再開できる形になって、あとから会長が「面白いやつがいるな」と会いに来てくださったんです。会長も専務も、ハートで仕事をされている方だなと感じます。
習いたかった自分から、次の世代へ
10月から、福岡のカスタネットへ
はい。高校生のときにアルバイトをしていた練習場です。実はそのことを、社内の誰も知らなかったんですよ。
期待されているのは、ジュニアスクールをもう一度立ち上げて、スクールに通ってくださる方を増やしていくことです。引き受けるときの気持ちは、20年前に東京へ出てきたときと変わりません。自信を持って、ただやるだけです。
今度は支配人ではなく、支配人を陰から支える立場で行きます。支配人の気持ちはよく分かっているつもりなので。まずは全スタッフと話すところから始めます。
カスタネットのコーチは、いま少し年齢層が高いんです。私より若い人が一人か二人。だから、若いスタッフが入ってきて、その人たちに任せられるようになることが、最終的な目標だと思っています。自分が全部やって終わり、では意味がないので。そしていつか、SDCグループ全体でゴルフをしっかり引っ張っていけるようにしたい。ゴルフを、会社の柱の一つにしたいと思っています。
ゴルフの仕事を考えている学生へ
ゴルフの世界で働くのに、選手として一流である必要はありません。私自身、教わったことすらないので。
資格を取りたい人には、研修会に一緒に参加するなど、手伝えることがあります。私が出ている練習場連盟の研修会にも、ゴルフにひたむきなスタッフがたくさん来ています。教えるスキルを上げたい、自分のプレーをもっと磨きたい。そういう気持ちがある人には、いい環境だと思います。
職場としては、アットホームです。お客様ともスタッフとも、楽しく話をしながら仕事を進めていける。働き方の相談にも乗ってもらえます。ゴルフだけでなくテニスやサッカーのスタッフもいて、元気な人が多くて、みんな仲がいい。ここで働くだけで元気になれる、という感じの施設です。
私は、習いたかったけれど、習う環境がありませんでした。だから、これから始める子どもたちが入りやすいスクールを作りたい。それが、ずっと変わらない仕事の理由です。


