やってみたいことを、仲間と形にする

自分から企画したイベントは、どう形になりましたか

この夏に企画したのは、小学生がクラブの練習に参加できる体験イベントです。毎週日曜日に、うちの中学生と一緒にいつもの練習をやってもらう形にしました。来年度の募集に向けて、体験して「ここに入りたい」と思ってくれる子が増えたらうれしい。そう思って計画しました。

提案したときの周りの反応は、「いいじゃん、いいじゃん」でしたね。練習も毎回自分がやるわけではないので、スタッフにお願いしました。自分が大事にしてきたことだけ伝えれば、あとはみんなが教えてくれる。一人で抱え込まないで手伝ってもらえたので、何も問題なくやり遂げられました。

最初は人数が集まらないんじゃないかと思っていたんです。それが、毎回、満員まで応募が来ました。参加してくれた小学5年生の子たちが「楽しかった、また来たい」と言ってくれて、やってよかったなと思いました。

60人いるクラブでU-15の監督を、いきなりやらせてもらっています。右も左も分からないので、試行錯誤しながらです。去年「どうする?」と話をもらったときに、自分から「やります」と言いました。できるのかなとは思いましたけど、これをやったら成長できるなと思ったので、やってみようと。

監督もこの企画も、自分から言ってやらせてもらったことです。自分から挑戦できる場所が、すごく多い会社だと思います。挑戦したことをちゃんと評価してもらえますし、それをサポートしてくれる。学生の方に伝えるとしたら、そこはおすすめできます。

選手からコーチへ進むことを決めたのは、なぜですか

小学2年生で、兄について今のクラブのスクールへ通い始めました。高校では1年生から試合に出ていましたが、大学では約70人の部員の下からのスタート。試合に出られない悔しさも、出る側の責任感も、その4年間で両方味わいました。

大学に入るときから、プロになれるなら続け、契約が取れなければ就職しようと決めていました。IT企業の営業職で内定をいただき、4年生でプロ契約は勝ち取れず、区切りをつけるつもりでした。働きながら練習するチームからも声をかけていただきましたが、両立できる自信がなかったんです。

気持ちが変わったのは、4年生の年末です。指導者やOBが年に一度集まる場があって、いろんな人から「もったいない、サッカーやりなよ」と言われました。自分の中にも、もう少しやりたかったという心残りがありました。それで、サッカーコーチをやります、と。

内定先には、コーチになりたいという事情も伝えたうえで内定をいただいていたので、少しは理解してもらえたのかなと思っています。ご迷惑はおかけしましたけど。

育ったクラブで、教える毎日

就職先に川越を選んだ決め手は何でしたか

もう一つ考えていたのは、高校サッカーの指導です。高校の教員免許も取っていたので、そちらもありだなと思っていました。

最後の決め手は、ここが自分の原点だからです。小学生の頃から育ててもらった場所なので、一番恩返しをしたいと思いました。

中学のときに一番影響をもらったコーチが、いまもここにいます。厳しいときは厳しくて、優しいときは優しくて、サッカーを教えるのが本当にうまい人です。この人みたいになりたい、と思いました。練習は走ってばかりできつかったんですけど、みんなで声を出して、終わってみれば楽しかったと思える。そういうメニューでしたね。

レッスンやクラブの指導以外には、どんな仕事をしていますか

事務の仕事もあります。いまは広報も担当しているので、他の会社さんとやり取りをしたり、デザインを考えたり。自分の持っているチームの日程を組んで、相手のチームと連絡を取り、決まった予定を会員様にお伝えする。事務仕事は、まったく苦になりません。

スクールの準備をして、夕方から指導に入ります。そのあとはクラブの活動を担当し、最後に片付けをします。

担当は、スクールが全体で400人ちょっと。そのうちのいくつかのクラスを受け持っています。クラブは中学生の女子で、60人が在籍しています。セレクションで選ばれた子たちで、各学年20人ぐらいですね。スクールの方は男の子が大半で、女の子は1クラスに1人か2人いるかいないかです。

休みの日は、友達と旅行に行くのが好きです。この夏は沖縄に行くつもりが台風で流れて、初島に行きました。あとは、サッカー選手になった友達の試合を、いろんなところまで見に行っています。

教える立場になってみて、難しいと感じるのはどんなときですか

やる側と伝える側では、全然違いますね。教えるのは難しいなと感じながらやっています。

たとえば、ボールを受けに行くタイミングや、シュートを打つタイミング。相手や状況によって変わるものを、自分の中では分かっているのに、うまく言葉にできないんです。

だから、とにかく子どもたちと話します。年齢が近いので、半分友達みたいに思ってくれている子もいて。同じ目線に立って話していると、話せば話すほど「ああ、そういうことね」と伝わる瞬間があります。そうやって関係性を保ちながらやっている感じです。

レッスンで一番大事にしているのは、できるようになったことをとにかく褒めることです。上手くなった時の達成感を味わってほしくてやっているので、ちょっとしたことでも褒める。スクールでは特に意識しています。

幼稚園の子は分かりやすいですね。トラップもドリブルもできなくて、列にも並べなかった子が、できるようになる。小さいほど成長が早いので、スクールではそれをすごく感じます。中学生になると、頭で理解して、仲間と協力して、グループとして成長していきます。全然勝てなかった相手に勝てるようになったときは、本当に感動します。

うまくいかないときは、抱え込みません。他のコーチに「こういうことがあったんですよ」と、その場で全部言ってしまうタイプです。周りのコーチは自分よりずっと経験が多いので、もらえるものがたくさんあります。

これまでで一番落ち込んだのは、どんな出来事でしたか

勝てると思っていた相手に、勝たせてあげられなかったときです。クラブの公式戦でした。

子どもたちは頑張っているのに、自分がいい伝え方をできなかった。すごく苦しかったですし、落ち込みました。子どもたちも悔しそうにしていて、だからこそ申し訳なかったです。自分もめちゃくちゃ悔しかったですね。

そのあとは、試合の映像を見返しました。それから、これまで関わってきた人たちに「こういうときはどうすればよかったんですか」と、とにかく聞いて回りました。負けず嫌いなんだと思います。

いろんな立場を知っているから

これから、どんなチームを作っていきたいですか

うちは町クラブなので、うまい選手は環境の整ったチームに行きます。それでも、そういうところから見て「下にいる強豪」だと思ってもらえるチームにはしたい。ここにいたらうまくなれる、ここにいたら楽しい。そう思ってもらえるチームを作れたらいいなと思っています。

自分がこの場所にいる意味も、少しは感じています。サッカーの現場は男性が多いので、女性のコーチをよく思わない人もいます。それはそれでしょうがないなと思っていて、自分の中では気にしていません。できることをできればいいかなと。

逆に、男の子から見て「女の人なのに、こんなにできるんだ」と思ってもらえたら、その子たちがサッカーをしている同年代の女の子を見る目も変わるかもしれない。そう考えると、自分がここにいる意味があるのかなと思います。

自分にとって、サッカーは遊びなんです。仕事がない日でも、なんとなくサッカーがしたくなって練習に行ってしまうことがあります。ただ楽しいからサッカーをする。その感覚を、子どもたちにも伝えられたらと思ってやっています。

最後に、進路に悩む学生へメッセージをお願いします

どん底を経験しているので、いまは何を言われても動じません。いろんな人に怒られ続けて、へこまされ続けて、こんなことでくじけていたら人生やっていけないなと思うことが多すぎて、こうなりました。

大学のときには、監督のところへ行って「辞めます」と言ったこともあります。思い立ったらすぐ行動してしまうタイプなので、急に言いに行きました。ちょっと待て、と言われて、面談をしてもらい、続けることになりました。

続けられたのは、負けず嫌いだったことと、人が好きだったからです。仲間もコーチも本当に好きだったので、この人たちと一緒に楽しみたかった。この人たちと離れたくないからサッカーをしよう、という感じでした。

結果が出ているに越したことはないと思います。でも、うまくなかった自分だからこそ、言えることがあると思うんです。試合に出られない悔しさも、メンバーに入れない悔しさも知っています。逆に、試合に出る側の、上の学年に迷惑をかけられないという責任感も知りました。いろんな立場を味わったから、言えることがたくさんある。そう思ってこの仕事を選びました。

いまの選択に後悔はありません。サッカーを辞めたからこそ、いまの子どもたちに出会えています。自分が選んだ道を、どう正解にしていくか。それを常に心がけています。

楽しんだもん勝ちですよ。