お客さまと話していると、一瞬で過ぎる
今、レッスンで一番楽しいのはどんなときですか?
一番やる気が湧くのは、僕もレッスン生の輪に入り、みんなで楽しく話しているときです。世間話で盛り上がり、お客さまの方から「そろそろレッスンしようか」と言われることもあるぐらいで(笑)。そんな雰囲気ができると、ほかのクラスの方が「このクラス、雰囲気がいいよ」と聞いて移ってきてくれます。「楽しいテニスを教えたい」と思っていた通りの時間を過ごせていると、一瞬に感じますね。
テニスコーチという道を選んだきっかけは?
高校のテニス部で後輩にアドバイスをしたところ、それが試合の結果につながり、「先輩のおかげで勝てました」と言ってもらえたんです。それが、教える仕事を意識した最初のきっかけです。
大学では教員免許を取るつもりでしたが、1回生のときにコロナ禍となり、教職課程はあきらめました。それなら、好きなスポーツのコーチになろう、と。大学時代はボランティアやイベント運営に数多く関わっていたので、大会やイベントに力を入れているITCに惹かれて応募しました。ほかのスクールも受けましたが、最初に合格をいただいたのがITCで、勤務地も関西圏。「規模も大きくて面白そうだ」と感じたのが、正直な決め手でした。
経験ゼロから、自分に合う教え方へ
経験ゼロからのスタートを、どう支えてもらいましたか?
よく覚えています。最初の半年は本当にきつかったです。同じ施設に配属された同い年の同期は、学生時代からアルバイトでテニスコーチをしていました。一方の自分は、コーチ経験ゼロ。右も左も分からず、勝手に比べて焦っていました。
一番のギャップは、自分がやってきたテニスと、人に教えるためのレッスンはまったく別物だということでした。「楽しいテニスがいっぱいできるやん」と思って入ったのに、コーチとして立つと、お客さまのどこを見て、どうすればいいボールを打ってもらえるか、考えることがものすごく多いんです。先輩に教わったことをもとに、同期と「これ、どうしたらいいかな」と相談しながら、一つずつ形にしていく毎日でした。
転機になったのは、会社の研修で木津川台へ行ったことです。福井コーチが「今、どんな感じ?」と声をかけ、自分たちがうまく言葉にできずにいた疑問や不安を、上の立場の人へ伝えてくれました。そこから、レッスンの進め方に関する疑問が一つずつ解消していったんです。あの研修がなければ、今ここにいなかったかもしれません。振り返ると、一番成長できた時期でした。今もエリア研修では、他施設のコーチのレッスンをそばで見て、取り入れられるものは取り入れています。

選手として実績がなくても、コーチになれますか?
できます。僕は大学でリーグ戦に出ていた程度で、実績のある選手ではありません。小柄で細いので、パワーやスピードで勝負するタイプでもない。だから思い切って、丁寧に、ミスをしないテニスに振り切りました。先輩コーチが軽くボールをつなぎ、ラリーを続ける姿をそばで見ていて、「こっちの方がかっこいいな。自分にも合っているな」と思ったんです。僕はテニスについてかなり考えるタイプなので、頭の中にあることを言葉にすると、大会に出ているお客さまから「コーチって、そんなところまで見てくれてるんや」と言われることがあります。それが自分の武器になりました。
生徒の変化と、日々の仕事
忘れられない瞬間はありますか?
今、通ってくれている生徒さんのことです。外に出ることが少なくなっていた時期がありました。お母さんがうちのレッスンに来ていたので、体験に来てくださいと声をかけたんです。そこからテニスに夢中になり、今は週に2、3回通ってくれています。今は、「大学でもテニスを続けます」と話してくれました。お母さんからも、「家でもずっとテニスの話をして、自分から出かけるようになった。すごく明るくなりました」と聞きました。あのときの声かけが、その子が前を向くきっかけの一つになったのかもしれない。そう思うと、一番うれしかった出来事ですね。

レッスン以外には、どんな仕事をしていますか?
コートの清掃やレジ、ボールの準備をして、レッスンに入ります。レッスンの合間には、イベントの準備や在庫確認などの事務仕事もあります。途中で一度家に帰って食事やシャワーを済ませ、夕方から夜のレッスンまで担当する日もあります。日曜日は、レッスンのあとにイベントを運営することが多いですね。
ITCはイベントが多いのが特徴です。レッスン中は「コーチ」のスイッチが入っていますが、イベントでは、また違うスイッチが入ります。みんなが自然に盛り上がっているので、僕も無理なくその輪に入れるんです。
休みの日は、梅田やなんばで服を見ながら歩き回るのが好きです。
つながりを、もっと広げたい
この仕事の、どこに一番価値を感じていますか?
人と人がつながっていく場に、自分も加われること。そして、自分がきっかけになって、誰かと誰かがつながることです。若い人も年配の方も、同じレッスンの中で自然に話している。年齢の壁を越えた空気をつくれたときに、大きな喜びを感じます。
ITCには多くの施設があり、お客さまの年齢層も本当に幅広いです。前の勤務地のお客さまが今も僕のことを覚えていてくれたり、ほかの施設のスタッフと連携したり。仕事を通して、自分自身のつながりが広がっていくのを実感しています。ほかの施設にも足を運び、いろいろな人と話して、その輪をもっと大きくしていきたいですね。今は施設長のもとで、のびのびとレッスンをさせてもらっています。次は自分が施設長のような立場になり、後輩を育てたり、「スクールをもっとこうしたい」という運営の部分にも関わったりしたいです。
テニスコーチになるか迷っている学生へ、メッセージを
テニスコーチと聞くと、レッスンだけをする仕事というイメージがあるかもしれません。でも、イベントで顔を合わせたり、レッスンが終わったあとも交流が続いたりして、長いお付き合いになる方が多いんです。自分の好きなものを通して、人とのつながりが広がっていく。それは素敵なことだと思います。
1年目は、一日がすごく長く感じていました。「お客さん来るんか、嫌やな」と思う日もあった。今は「今日はこのお客さまが来るから何をしようかな」と考えているうちに、一日が一瞬で終わります。お客さまから、毎日テニスをしていて飽きないかと聞かれるんですけど、飽きないですね。「今のはなんでこうなったんやろう」と考えることが無限にあって、家でもテニスの動画ばかり見ている。よっぽど好きなんやろうな、と自分でも思います。たぶんこの先も、テニスをずっと好きなままやと思います。


