一言ずつ、近づいていく
お客さまと話すときに、続けてきた工夫はありますか?
入社する前は、人と話すのが苦手でした。この仕事を選ぶとき、気にならなかったかと言われれば、そりゃあ気にはなっていました。
入社して何ヶ月かは、見た目やイメージだけで「この人は苦手だ」「この人は怖い」と決めつけているところがありました。まず、それをやめて、「みんな同じ人なんだ」と考えるようにしました。そのうえで、いきなり距離を詰めすぎないことを意識しました。
最初は一言か二言でいいんです。その日のレッスンはそれで終わっても、次の週にまた来てくれた人、振り替えで来てくれた人には、先週より一言多く話す。それを続けてきました。
難しかったのは、同性の方との関わりです。子どもとはまた違って、踏み込むのが怖かった。今でこそ、やっと関係を作れるようになってきました。
今は、いい意味でも悪い意味でも、近い距離が好きなんです。自分から積極的に距離を近づけにいくので、コミュニケーションはよく取れている方だと思います。自分でも、こうなるとは思っていませんでした。
レッスンでも、一人ひとりと向き合う時間は多めに取っています。私と一対一でラリーをする時間は、形式練習やサーブより長いかもしれません。ボール集めのときや、夏場に長めに取る休憩中には、テニスとまったく関係のない話もよくします。振り替えでいらした方から「コーチが長くラリーに入ってくれるのがうれしい」と言ってもらえることがあって、これからも続けていきたいです。
テニスコーチという道を選んだきっかけを教えてください
高校の部活の顧問の先生です。
私はなかなか試合に勝てない選手でした。そんな私に、先生は二人三脚のようにずっと付き合ってくれました。もちろん技術面でも教わりましたが、何より助けられたのは気持ちの面です。試合中も、前向きに切り替えられるような言葉を、ほかの生徒より多めにかけてもらっていたと思います。おかげで気持ちを入れ替え、勝てた試合もありました。
自分の性格を一言で言うなら、負けず嫌いです。ただ、負けず嫌いなのとメンタルが強いのは、別なんですよね。肝心なところで気持ちが上がったり下がったりして、マイナスの方に引っ張られる。それは今も変わりません。
そんな私を支えてくれた先生の指導力とコミュニケーション能力に憧れました。私も誰かを支えられる人になりたい。テニスを通して、誰かと一緒に楽しさを作っていきたいと思ったんです。
高校生のうちに専門学校のテニスコースへ進むと決め、指導者の資格を取りました。パーソナルトレーナーの道とも迷いましたが、試合に出続けるなかで、やっぱりテニスが好きだと確かめ直せたんです。
助けてもらいながら、コートに立つ
就職先にITCを選んだ理由は?
学生のころ、テニスクラブでアルバイトをしていました。そこで知り合った方から、ITCのことを教えてもらったんです。ちょうど同じころ、私もスマホでテニススクールを探し、ITCの説明会と面接を予約していました。タイミングが重なったんです。
ほかのスクールの説明会にも行きました。そのうえでITCに決めたのは、社員を大事にしている会社だというのが、一番伝わってきたからです。
そう思ったのは、社内の方たちが「ITCとはどんな会社か」「どんな気持ちで働いているか」を話しているインタビュー動画を見たからでした。コーチだけでなく、フロントの方も裏方の方も出てくるんです。話している人たちの気持ちの強さと、社員を大事にしているという言葉が、一番刺さりました。
それに、まったく知らない世界で自分を試してみたい気持ちもありました。今思うと、そこだけはメンタルが弱くなかったのかもしれません。

初めてのレッスンで悩んだとき、誰に相談しましたか?
初めてメインで担当したレッスンのことは、今でもはっきり覚えています。終わったあと、辞めたいと思いました。
社内に憧れているコーチがいます。六甲の寺田コーチです。初めてメインに立った自分と比べて、全然違う、程遠い、と落ち込みました。思い描いたとおりにいかないのは分かっていたつもりでしたが、それ以上に、できない自分が嫌でした。
そのとき助けてもらったのが、入社したときから相談に乗ってくれていた上司でした。話を聞いてもらって、次はこうしたらいい、と言ってもらえて、そこで立ち直れました。恥ずかしい話、どんな言葉をもらったかは覚えていないんです。それでも、聞いてくれる人が社内にいたから続けられました。
今も、業務で分からないことがあれば六甲の寺田コーチに、ジュニアのチームのことなら別の施設の先輩に、と相談できる先が何人もいます。月によってはエリアの研修会があって、ほかの施設のコーチと一緒に学ぶ機会もあります。日曜日には、寺田コーチが持っている一番レベルの高いクラスに、練習生として入らせてもらうこともあります。一人で抱えなくていいんだ、そう気づいてから仕事が楽になりました。
一日の仕事と、今の課題
レッスン以外の仕事や、休みの日の過ごし方は?
レッスンの合間に事務の業務を進めて、またレッスンに入る、という流れです。レッスンを多く担当する日もあります。
日曜日は、担当レッスンのあとに業務をしたり、寺田コーチのクラスへ練習生として入ったりすることがあります。エリアの研修会で学ぶ機会もあります。
休みの日は、ぐうたら生活です。ずっと寝ています。そうやって充電しています。

最近、うまくいかなかったことはありますか?
最近、しっかり落ち込んだことがありました。子どもたちのジュニアクラブカップという大会の、六甲予選です。
私がメインで仕切らせてもらう予定でした。ところが、最初の保護者の方への説明を、切り出す勇気が出なかったんです。結局は寺田コーチに頼ってしまって、時間配分も押してしまいました。
憧れて就いた仕事ですけど、楽しいだけではないな、と思う日はあります。一人でメインを持たせてもらっている今も、指導力はまだまだです。レッスンも、もっと考えて組み立てられるようにならないと。
それでも、あの一件で課題がはっきりしたのは大きかったです。私、いつかは自分ひとりで最後までやりきりたいんです。そのためには、普段から保護者の方と関わりを作っておくこと。それから、全体の前で話す機会を自分から増やすこと。レッスンの中でもそうですし、人前で話すこと自体に慣れないと。
次に挑戦したいこと
これから、やってみたいことを教えてください
この1年半で、変わったことがあります。自分の意志を持つようになりました。レッスンの内容も、前より深く考えるようになりました。入社して何ヶ月かは本当にひどくて、お客さまと目も合わせられないし、まともに喋れなかったんです。そこからやっと、コーチとしての自覚が持てるようになってきました。
さっきの話の続きなんですけど、いつかは自分が主催するイベントを持ちたいんです。一つの施設だけではなく、全施設共通で運営できるものにしたい。子どもたちの大会に、今はない年代の部を作って、その子たちが大人の大会(ITCカップ)につながっていく。いろんな年代の人が、テニスに関わる時間を増やしていけたらいいなと思っています。
もちろん、チームの協力がないとどうにもならない部分はあります。それでも、そこは私がメインでやりたいんです。
最後に、この仕事を迷っている人へメッセージをお願いします
一回やってみれば、と言うと思います。
どの業界に入っても、しんどいものはしんどいです。そこは変わらないと思います。ただ、ITCには、頼っても大丈夫な人、絶対に助けてくれる人がいます。私自身、そうやって助けてもらってここまで来ました。
コミュニケーションが得意である必要も、最初から何かができる必要もありません。私がそうでしたから。


