伝え方を考えるのが、面白い

サッカーコーチという道を選んだきっかけは?

「インステップで運ぼう」と言っても、子どもたちには伝わらないんです。そこで、「足の甲の小指側で」と言い換えてみる。それでも伝わらないことがあり、「これも伝わらないんだ」と気づくのが、僕にはすごく面白かった。自分なら何も考えずにできることを、一つひとつ言葉に置き換えないといけない。その作業を面白いと思えたのが、教える仕事を意識した最初のきっかけです。大学2年生のとき、小中学生の頃に自分が通っていたこのスクールで、アルバイトを始めました。

同じ頃、プロを目指す道は諦めました。僕はけがが多く、このまま選手として生き残るのは厳しいだろうと、自分でも分かっていたんです。もともと「こいつはプロになる」と言われるような選手ではなかったので、気持ちは意外とすぐに切り替わりました。それと同じくらい、コーチのアルバイトが楽しかったんだと思います。

就職では一般企業も考えました。ただ、自分のやりたいことを仕事にするのが一番だと、ずっと思っていたんです。僕にとっては、プロ選手かコーチか、その二つでした。部活動の幹部としてデータを入力することもありましたが、そうした作業に楽しさは感じられなかった。だったらコーチになろう、と。ここ以上に、自分が教えたいと思える環境はありませんでした。

レッスンで大事にしていることは何ですか?

スポーツの指導では、怒ることがどこか正当化されているところがありますよね。強く言ってもいい、というような風潮です。少しずつ変わってきているとは思いますが、僕はそれがいい指導だとは思いません。怒って伝えるのが、一番楽なんですよ。だから、したくない。

アルバイトの頃は、毎回それを意識してやれていました。でも社員になってレッスンのコマが増えて、担当する学年ができると、「うまくしてあげたい」という気持ちが先行してしまう瞬間がやっぱりあります。怒鳴ったりはしないですけど、「今日のあの伝え方、絶対よくなかったな」と、レッスンが終わってから毎回振り返っている。4月からずっとです。1年目で一番印象に残っているのは、その繰り返しかもしれません。

振り返る方法は二つあります。一つは、レッスンのあとに先輩と「今日のあれ、どうだった」と話すこと。もう一つは、すべてメモに残すことです。試合やレッスンのたびに「今日はこれが課題だった」と書き、その下に「自分の伝え方はどうだったか」を記します。1か月、2か月たって、また同じことを書いていたら、「これはループしてるな」と分かるんです。誰かに言われて始めたわけではありません。頭の中だけで整理できる器用なタイプではないので、一つずつ書かないと分からないんです。

もともと、きっちりやりたいタイプなんです。連絡もまめに返したいし、変なところが細かいとよく言われます。自分では真面目だと思っていないんですけど、傍から見ると「すごく真面目だね」と言われることは多いですね。

その分、「考えすぎ」ともよく言われますし、正直それで苦労もしています。「今の伝え方、深掘りされたときにちゃんと理由を説明できるかな」と、あとから考え込んでしまう。サッカーをやっている人は明るくて何も考えずに走り回っている、みたいなイメージがあるかもしれませんが、僕はけっこう繊細な方かもしれません。ただ、書いて、直して、また書く。1年目の自分にできることは、今のところそれくらいだと思っています。

鈴木 凜生さんの仕事風景

子どもの変化と、社員としての毎日

忘れられない瞬間はありますか?

担当している子の中に、うまくいかないと機嫌が悪くなる子がいました。その子が、本当に最近、サッカーへの向き合い方を変えてきたんです。プレーがうまくいかなくても機嫌を崩すことが減り、チームに「これをしよう」と声をかけられるようになりました。

その子には、一度も怒っていないんです。気持ちが行動に出やすい子だったので、強く言えば練習に来なくなることも考えられました。「練習に来い」「真面目にやれ」と言いたくなる場面でも、本人なりにきちんと取り組んでいる。だから、否定だけはしませんでした。「楽しい?」と聞いて、「楽しい」と言うなら、「じゃあいいよ。ただ、こうしてみようか」と伝える。本当にそれくらいです。それでも少しずつ変わっていきました。怒らなくても、こんなに変わるんだと、最近強く感じています。

保護者の方からすれば、若いコーチが急に自分の子どもの担当になり、不安もあったと思うんです。それでも見守ってくださり、のびのびと指導させてもらっています。欠席やけがの連絡をいただくなかで、「家でもサッカーが楽しいと言っています」と聞くことがあります。あれが一番うれしいですね。

アルバイトから社員になって、何が変わりましたか?

一番変わったのは、ほかの社員が何をしているのか見えるようになったことです。売上の話は、まだ分からないことばかりです。どの仕事で、どのくらい利益が出ているのかも、説明してもらってようやく理解できる段階です。いずれ自分も担当することになると思うので、正直、今から少し身構えていますね。

1年目は現場での指導を中心に担当し、施設内の業務量は調整してもらっているのだと思います。仕事を教えてくれる先輩がいて、挑戦する機会ももらえる。そこは本当にありがたいです。同期は、ほかの競技も含めて3人います。事業所が違うため普段は会いませんが、入社2か月ごろには、幹部の方が集まる機会をつくってくれました。先日の全社研修でも「久しぶり」と話しましたね。サッカー事業部では施設をまたいで関わる機会があり、ほかの施設の方ともよく連絡を取り合っています。

入社して驚いたこともあります。新卒1年目でもイベントを提案でき、実際に企画が通るんです。夏休みの集中練習は、これまでエンジョイ向けと特別クラスの2本立てでした。そこへ「競技実績のある学生アルバイトによる特別レッスンを開いてはどうでしょう」と提案しました。「それ、いいね」と採用され、今まさに実施中です。参加者も増えています。入社して数か月の社員が出した案が、その年の夏に形になる。これは当たり前のことではないと思います。

レッスン以外では、どんな仕事をしていますか?

レッスンが始まるまでは、施設内の業務をしています。1年目なので担当業務はまだ多くありませんが、先輩から任された仕事や、グラウンドと施設の環境整備を進めます。そのあと、夜のレッスンまで担当します。

休みの日は、午前中にジムでトレーニングをして、午後はまたサッカーを見ています。弟と妹が同じスクールでサッカーをしているので、送り迎えをするついでです。中学生の練習に混ざることもあります。趣味を聞かれると困るんですよ。子どもたちのサッカーを見ることが、そのまま趣味になっているので。自分でも「ほかの趣味もつくった方がいいな」とは思っています。

鈴木 凜生さんの仕事風景

これからも、教える仕事を

これからの目標は?

大きな目標は、「このコーチだからやりたい」と言ってもらえる人になることです。身近な先輩に、実際にそう言われている人がいるんです。その姿を目指したい。僕はよく「人のブランド力」という言い方をします。「あの人のところでサッカーをやりたい」という子が増えれば、自然と会社やチームの力にもなりますから。そのためにできるのは、現場に立ち、信頼を一つずつ積み重ねていくこと。いつも自分の指導を振り返り、少しずつ見直していく。結局、そこだと思っています。

進路に悩む学生へ、メッセージを

スポーツクリエイトに入るか迷っている人は、きっと、自分のやりたいことがある人だと思うんです。この仕事が気になって迷っているなら、その時点で一歩踏み出してみてほしい。迷うのは、自分がやったら楽しいだろうと思える仕事だからではないでしょうか。

僕の周りも、土日祝が休みかどうか、給料や福利厚生を見て就職先を決める人が多かったです。当然のことだと思いますし、僕もそこは考えました。ただ、条件を比べたあとに、「それを毎日やりたいんだっけ」という疑問が自分の中に残ってしまって。同じところで引っかかっている人がいるなら、こちらの道もありますよ、と伝えたいです。

新入社員の今、仕事を「楽しい」と思えていることが、僕にとっては何より大きいです。同級生が「ああ、仕事に行かなきゃ」と言っているのを聞くことがありますが、僕には仕事に行きたくないと思う日がないんですよ。楽しいです。それが一番ですね。