「できない」の理由が見えたとき
レッスンで、いちばんうれしいのはどんな瞬間ですか
いちばんうれしいのは、お客様の悩みが解決したときではなくて、その手前です。
なんとなくテニスをやっている方って、けっこういらっしゃると思うんです。ミスをしたことは自分でも分かるんだけど、何が悪いのかは分からない。それでずっと同じことを続けてしまう。
その「できていないところ」を自分が見つけられたときが、いちばんしっくりくるんですよ。ここがちょっと足りないですよ、こうした方がいいですよ、と伝えて、納得してもらえたとき。自分が言ったことは間違っていなかったんだな、と思えます。そのあと、それを練習して実際にできるようになって、喜んでもらえると、またうれしい。
教える仕事をしたいと思ったきっかけは?
高校で、後輩や同期から戦術についてよく聞かれるようになったんです。毎日一緒にいる仲間に教えて、その子がレベルアップして、試合で勝ってくれる。それがうれしかったんですよ。
ああ、こういうことを続けていきたいなと思って、高校のときにはもう「テニスコーチになりたい」と考えるようになっていました。
6歳でテニスを始め、高校は山口から福岡へ進みました。静かな性格なので、親元を離れて相談できる人を作れるか不安でしたが、親に背中を押してもらいました。寮生活では、親のありがたさも感じました。
教える仕事を、自分の仕事に
それでも、高校卒業のタイミングでは大学に進んだんですね
高校3年のインターハイで進路の幅が広がり、大学へテニス推薦で進みました。コーチもやりたかったけれど、選手として挑戦できるチャンスを生かしたかったんです。
2年生の冬に膝を怪我し、思うように結果が伸びなくなりました。ただ、自分の中ではやりきった感じでした。部活はアルバイト禁止だったので、引退してから初めてコーチのアルバイトを始めました。

就職先にスポーツクリエイトを選ぶまでを教えてください
最初のアルバイト先は、家の近くの駅前のテニススクールでした。半年くらいやりましたけど、就職先としては選びませんでした。
駅前だったので、習い事みたいな感覚で来られるお客様が多かったんです。上手くなりたいというより、体を動かせればいい、という方が中心でした。そういう通い方は当然ありますし、それに応えるのもコーチの仕事だと思います。ただ、当時の自分は選手としてやってきたので、テニスコーチは選手を育てる仕事だと思い込んでいて、自分が持っていたイメージとは違うな、と感じてしまって。
ジュニア育成のスクールも見学しましたが、個人事業主の契約で、天候によって収入が変わる点が自分には合いませんでした。正社員の仕事を探して見つけたのが、スポーツクリエイトです。
面接で、社長と高校の監督が大学の同期だと分かりました。高校時代に僕が「テニスコーチになりたい」と話していたことも、監督から社長に伝わっていたそうです。そういう縁もあって、面接では言いたいことを楽に話せて、ここで働きたいと思いました。
お客さまとの距離を探す
お客さまと話しやすい雰囲気を、どう作っていますか
まず声です。僕、声が低いので、聞き取りやすいように高めに出すようにしています。もともと騒ぐタイプでもなくて大人しい方なので、意識して大きな声を出しています。
あとは雰囲気ですね。説明ばかりしていると、お客様は「ああ」って聞くしかなくなってしまうんです。そうすると盛り下がって静かになって、僕もやりづらくなる。だから積極的に話しかけたり、ちょっと冗談を混ぜたりして、距離を近くするようにしています。僕自身、明るいレッスンの方が好きなので。

うまくいかなかったことや、いま悩んでいることはありますか
落ち込んだのは、実はテニスのことではないんです。
会社としての動き、いわゆる報告・連絡・相談のところでした。国分寺はボールが場外に出てしまうことがあるんですけど、その対応は、もちろんマネージャーに連絡するべきところなんです。それを僕が伝えきれていなかった。連絡が遅れてしまったこともありました。テニスコーチをやっていて「できていないな」と感じることはあまりないんですけど、そういうところは全然ダメだったなと思います。
いま悩んでいるのは、お客様との距離感です。
レッスンでは、1対1で打ったあとに、一人ひとりに具体的なアドバイスを渡すようにしています。でも、それを求めていない方もいらっしゃる。僕はしっかり伝えたいし、上手くなってほしい気持ちがあるんですけど、その方は打てれば十分だったりする。言うとちょっと嫌な顔をされてしまうこともあります。「難しいところありますか」と聞いて「何もないです」で終わってしまうと、やっぱり寂しいんですよね。ここはなんとかうまくやっていきたくて、いろいろな先輩のコーチに聞いて改善していけたらと思っています。アシスタントで一緒に入っていた先輩もいるので、聞ける相手はいます。
もう1つは、アシスタントコーチへの伝え方です。最近、僕より後に入ってきた学生アルバイトのコーチが増えて、アシスタントで入ってもらうことが多くなりました。それまではメインとして自分のレッスンのことしか考えていなかったんですけど、これからは伝える立場になります。僕も最初はアシスタントをやっていたので、あのときの基本を頭に入れながら伝えられたらいいなと。明日、アルバイトの学生向けに研修をやる予定なんですよ。雨だとどうなるか分からないですけど。
この5か月でいちばん変わったのは、たぶんそこです。学生のときのアルバイトは、行ってレッスンをして帰るの繰り返しで、責任感はあまり感じていませんでした。いまは会社に1日いて、自分が伝えなきゃいけない立場になった。全部が責任感につながっている感じがします。
一日の仕事と、これから
初めて一人でレッスンを担当したときは、どうでしたか
4月と5月は、先輩コーチのレッスンにアシスタントで入っていました。入ったばかりの頃は、やっぱり毎回緊張していたんです。それでもお客様がいっぱい話しかけてくださって、距離が近くなっていくと、自分もどんどんやりやすくなっていきました。
メインで入るのは6月末か7月からの予定だったんですけど、6月の後半に予定が前倒しになって、いきなり代行で1人のレッスンに立つことになりました。
メニューは送ってもらっていたので、やることは決まっているんです。それでも、1人でやるのは新鮮でした。盛り上げるのも自分しかいないので、かなり気を遣いましたね。めちゃくちゃ緊張しました。終わったあとにお客様に「どうでした」と聞いたら「スムーズでよかったよ」と言ってくださって、それで安心しました。
そのあと7月からは、福岡の系列のスクールに出張に行きました。前半を僕、後半を先輩コーチが担当するかたちです。地元の山口が近くて、あまり帰れていなかった実家にも帰れたので、ちょうどよかったです。
いまは国分寺で、一般クラスとジュニア、育成も持たせてもらっています。
担当は日によって異なり、朝からレッスンに入る日も、夜のレッスンまで担当する日もあります。
雨が降るとレッスンが中止になるので、その日はお客様から預かったガットを張ったり、スクールのブログを書いたりしています。
ブログでは、意識してテニス以外のことを書くようにしています。テニスのことばかりだと、テニスしか頭にないやつだと思われるじゃないですか。あまり読まれていないのかなと思っていたら、けっこう「見たよ」と言ってくださる方がいました。
これからの目標と、進路に悩む学生へメッセージをお願いします
5年後、10年後でいうと、海外に行きたいです。
僕、もともと韓国が好きで、韓国語をずっと勉強していて、検定も持っているんです。最初は「韓国でテニスを教えたい」という気持ちがありました。社長との面談でその話をしたら「いいじゃん」と言ってくださって、韓国にも会社を作ろうかな、みたいな話にまでなって。
まずはここで知識も教え方も身につけて、そのうえで海外でも教えられるようになれたらと思っています。向こうは向こうでプレースタイルも違うので、それを学べたら自分の幅も広がるので。
こういう話を面談で普通にできてしまうのが、この会社のいいところだと思っています。いい意味できっちりしすぎていないというか、自由な部分がすごくある。入社してすぐの合宿も、緊張して行ったのにみんなよくしてくださって、業務っぽくないというか、楽しそうにやっている人ばかりでした。
僕は一言でいうと静かな性格なんですけど、この仕事を始めてから明るくなったと思います。人と毎日接していると、だんだん明るくなるんですよ。
テニスコーチをやろうか迷っている学生には、もちろん勧めたいです。
テニスをやるだけでもいいんですけど、自分が持っているものを自分だけに使うんじゃなくて、周りに還元することで喜んでくれる人がいる。それを知ってほしいなと思います。
あともう1つ、伝えたいことがあります。
僕が中学まで教わっていた地元のコーチが、最近、指導を退かれたんです。けっこう厳しめの人で、自分から聞きにいかないと教えてもらえませんでした。プロの選手もたまに来るスクールだったので、そういう人にも自分から聞きにいけ、と。当時は面倒くさいと思っていたかもしれません。でも、自分から聞いて上達した部分は間違いなくあるので、厳しくしてくれたことは良かったなと今は思います。
僕たちの仕事は、聞きやすい環境を作ってあげることかもしれません。でも、その環境が完璧に作られていなくても、自分から聞いてくれる人は、テニスだけじゃなくていろんな面で成長できると思うんです。他の人には教えていないことまで教えてもらえるかもしれない。上手い人がいるときは特に、自分から積極的に話しかけて、聞いていってほしいなと思います。


